ミラボと実家ができるまで

初めての町家住まいで感じた
白黒つけない居心地のよさ

結婚してしばらくは
祇園のはずれにある、小さな町家を
住まい兼職場としていました


路地に面した入ってすぐところに
お商売の空間である「ミセの間」があり
日中仕事をしていると
格子越しにぼんやり路地の気配が伝わって
街につながっている安心感が心地良い家でした


新参者が入りにくいイメージの京都コミュニティですが
私たちの住む町ではほとんどが70才以上で
即戦力として、町内会の役員や
地域のお祭りに参加させてもらいました


町家暮らしで学んだことは まだまだあります

小さいけれど合理的にプランニングされた台所
パリッと音がするほど完璧に乾く物干し
家中をくまなく いさぎよく駆け抜ける風の通り道


本や雑誌では知りえなかった
生活と仕事のどちらにも傾きすぎない
グラデーションある居心地良さが
体にしみこむ体験でした

逆転の発想で
デフォルト設定をひっくり返す

義両親の新居を設計するにあたって
まずは、お義父さんとお義母さんたちが
これまでの人間関係を一からやり直さなければいけないことが
気になりました


今日起こったできごとや友だちを日々住まいに運ぶ
「動く公共空間」的 子どものいない世代の家を
どう設計すればよいのか?


もう一つ問題がありました

それは探しても探しても
ここ!と思える土地にめぐりあえなかったこと


うーん困った・・・というところで
よくよく不動産屋さんに話を聞いてみると
お義父さんとお義母さんの望む物件は
みんながほしいと思う人気の物件で
売り主さんの立場が買い手よりずっと強い

だからあらかじめ住まいのレールをがっちり敷いた建築条件が
買い手の自由を奪っていく


だったら
私たちもそろそろ事務所を外に出したいと思っていたところだし
事務所というプログラムをくっつけて、土地の予算をあげてしまえば
買い手と売り主の力関係がバランスする価格帯に入るのでは?
と思いはじめ

そうして具体的に新しい青図を描いて、土地を探し始めたら
郊外の住宅地なのか、はたまた街中なのかすらぼんやりしていた
土地のイメージが明らかになってきたのでした

住み慣れた住宅地と
便利でにぎやかな街の雰囲気が
せめぎあう場所

そうこうするうち
突然すべてのピースがピタッとパズルに合う物件にめぐりあい
設計がスタート


方位的には、全面道路が南の、南入り敷地

義両親が気にしていた住宅のプライバシーを考えると
日当たりが必要な庭が、駐車場、事務所が道路側に来るのが自然

大きな目当てがついたところで
周辺の公園や駐車場などの空地の配置を考えあわせながら
道路側の庭・駐車場・事務所の3つとおもやの
大きさと組み合わせ方を検討します

いろいろ検討するうち
駐車場の上に軽く事務所を浮かべるのが
この場に一番ふさわしいと思えてきました

ふと顔をあげると目に入る
庭の一部でも
お向かいの集合住宅の一部でもあるような
軽やかな私たちの仕事場

それは、近頃よく思い出すという
古い蔵とつながり、にぎやかで明るい家だった
お義母さんの実家のイメージとも重なり

そこで風通しの良いお義母さん実家に思いをはせて
町家的に、北側にもう一つ小さな坪庭をつくり
敷地の良い「気」を
三次元的に循環させるイメージが一気に膨らんできました

せっかくだったら
みんなが気持ちよく

遠隔ゆえ、敷地探しは嫁である私の担当

だから求める敷地に巡りあったころには
すでに、家族全員の間で新しい生活のイメージが共有されて
設計の進行はスムーズでした。(設計期間は6ヶ月)


「うなぎの寝床」ほど奥に深くはないものの
「ダックスフントのベッド」くらいの奥行きはあった今回の敷地

学者で蔵書が多い義父の家は、ともすれば暗くなりがち。
そこをどうしても明るく、というお義母さんの意志を尊重し
間口が大きくとれる、鉄骨造とすることになりました

道路側に張り出した事務所は
東から差すお隣の朝日を奪わないよう、東側に配置

それぞれの部材やジョイントを反映した、最終的な構造はこんな風

鉄骨のブレース(斜めの部材)で上から吊ります
普段作業するスペースはおもやとは目がささないように
L字に配置した仕事場
一日の大半を書斎で過ごすお義父さん
ちょっと顔をあげれば、南と北の2つの庭がのぞけます


この後、工務店に見積もりを出し(約1ヶ月)
予算オーバーした部分の減額調整と設計変更(約1ヶ月)
建築確認申請を出し、申請がおりたところで(約1ヶ月)
いよいよ、工事スタートです!

現場クロニクル

現場8ヶ月間を時系列でご紹介します。

11月25日

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12月14日

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基礎の配筋が終わったところで
できあがりの大きさをイメージしています

12月20日

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ポーチになる場所
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鉄骨建方の定点観測 すごいスピードなのです
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すべてのパーツをこんな風にクレーンで運んで
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鉄骨が組み上がった段階で見てもらいました
手摺がついていない吹き抜けを飄々と歩くお義父さん

1月11日

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庭のコンクリート擁壁の鉄筋
駐車場からの入り口の風景はこんな感じ

1月17日

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「大きなかぶ」を思い出さずにはいられない
建築はチームワーク

1月20日

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ポーチに土を投入

1月27日

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屋根はないけど壁があるから
外だけど部屋みたいな玄関ポーチ
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現場で職人さんに玄関が分かりにくいと指摘され
韓国のお箸チョッカラを埋めることになりました
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屋根の防水をして板金
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サッシュが入って寒さがしのげるように

2月8日

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フローリング下の
根太と断熱材を兼ねる「ネダフォーム」
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鉄骨には直接仕上げを貼ることができないので
胴縁という木の部材を組んでいきます

2月22日

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お風呂は二階なので
防水のリスクとお手入れを考えハーフユニットバスに

3月3日

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吹き抜けまわりの腰壁ができてきました
コーナーごとに大工さんの居場所が
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1階から見るとこんな感じ

3月6日

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一番いい場所を知っている現場の人達
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駐車場からはこんな風に見えます

3月10日

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浴室の天井と壁も珪藻土で仕上げました

3月15日

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お義母さんの希望で「蓄熱式暖房機」という
電気式の暖炉を入れることに

3月17日

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2階のバルコニー
バリッと洗濯物が乾きますように
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鉄骨階段が
冬の素足でヒヤッとしないように
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本で隠れる二階の壁はペンキ
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庭の園路のフレーム

3月20日

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できたてほやほやのテラス
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リビングのある一階の壁は珪藻土に

4月8日

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愛媛の菊地さんが漉いた泉貨紙
吹き抜けの腰壁に和紙を貼っているところ
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吹き抜けを通る光をやわらかく拡散させるため
和紙を貼りました

4月11日

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庭らしくなってきた北の坪庭
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庭が小さな森に
この日を境目に道行く人の視線が庭に

5月4日

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仕事場はコストを考えて天井と壁に和紙DIY
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天井と壁をすべて貼り終えるのに
丸一週間かかりました
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足場がばれ、庭ができたら
はなれに夕焼けが映るように